★浦島伝説文献
 

文献	編者・作者	時期	主人公	女性	続柄	場所	期間	経過時間	アイテム	エンディング
日本書紀	舎人親王	720年	瑞江浦嶋子	女人亀	妻	蓬莱山 （とこよのくに＝常世の国）	－	－	－	各地を巡り仙人に会う
丹後国風土記	作者未詳	8世紀	筒川嶼子 水江浦嶼子	仙界の娘（神女） 「亀比売」	妻	蓬莱山	３年間	300年	玉匣	嘆き悲しみ徘徊
万葉集	家持編纂説有力	8世紀中	水江之浦嶋児 水江之浦嶋子	海若の神の女	妻	常世国　海若の神の宮	３年間	－	玉櫛笥	老化・死亡
続日本後紀	文徳天皇	869年	浦島子	天上仙家之女		常世之国
続浦島子伝記	作者未詳	920年	水乃江之浦嶋児 水江之浦嶋子	蓬莢山の女	妻	蓬莢宮	僅かの間	数百年	玉匣	老化・消息不明 （地仙と呼ばれる）
本朝神仙伝	大江匡房	11世紀後	浦嶋子	？	？	？	？	347年	？	？
水鏡	中山忠親説有力	1195年頃	浦嶋の子	－	－	－	－	347年	玉の箱	老化
扶桑略記	皇円	12世紀末	水江之浦島子	亀姫 蓬莢山の女	接待 妻	常世国　海中の大島 蓬莢宮	？	？	玉匣	－
古事談	源顕兼	13世紀初	水江浦島子	蓬莢山の女	妻	蓬莢宮	？	300年	玉匣	－
群書類従	塙保己一	1793年頃	水江浦島子	蓬莢山の女	妻	蓬莢宮			玉匣	老化
御伽草子	作者未詳	14-18世紀	浦島太郎	美しき女房	妻	竜宮城	３年間	700年	箱	鶴となり蓬莱山に飛ぶ
日本昔噺	巌谷小波	1896年	浦島太郎	乙姫	接待	龍宮城	３年間	300年	玉手箱	老化
尋常小学唱歌	文部省	1911年	浦島太郎	乙姫	接待	龍宮城	－	－	玉手箱	老化

　彼が帰りたいと言ったのは、「群書類従」までは望郷の念で一時帰省を求めた形となっている。「御伽草子」では、両親を養っていたのが帰る理由である。。。扶養していた父母を３年間も放置するのか。。。-_-;　
　浦島が帰って来たときは浦島効果が生じていた。　@_@?　要は竜宮城から家に帰ったら何百年も経っていた。乙姫は浦島が帰っても家族に会えない事を最初から知っていたのである。なぜなら、玉手箱を開けたらどうなるかを彼女は知っていたのだから。。。

 

　浦島官能小説は10世紀に成立した「続浦島子伝記」（及び「浦島子伝」）という浦島文献の中でも異書のようなもので、原作と言われるものではない。乙姫との関係も元妻であり、昔のように契りましょうと竜宮城に連れて行くのである。そこには確かに「医心方」（日本現存最古の医学書：巻27房内編は後に性愛の秘本となり、発禁にもなった）から引用した性技が織り込まれている。時は平安時代、貴族たちに好かれる描写だったのかもしれない。

1990/03/15 王朝びとの浦島説話 : もうひとりの浦島太郎『続浦嶋子伝記』略注【URL】
2001/06/20 『医心方』 房内篇についての考察 - 日本医史学会【URL】

　ただ、どんな快楽・酒池肉林であろうとも、人は社会から孤立しては生きていけない。望郷の念が湧いても不思議はないし、乙姫に会いたければまた帰ってくれば良いだけの話である。
　しかし、それは叶わなかった。どの物語も、乙姫は彼を留めようと必死で懇願するも、聞き入れてもらえなかった。自分から離れる浦島に、「決して開けてはいけません」と渡した玉手箱。乙姫が想いを込めて浦島に渡した最終アイテムを、浦島はあまり気にせず受け取ったのだろう。乙姫は浦島との関係が終わったことも二度と会えない事も認知していた。
　ゼウスが人間族に災いをもたらす為に、開けてはならぬとパンドラに渡した箱を開けてから(紀元前15世紀)、8世紀まで２３００年。乙姫にとってはたった２３年前（３年＝３００年から逆算）の話なのかもしれない。彼女はゼウス同様カリギュラ効果を利用し、浦島に箱を開けさせるための明確な意思があったと思われる。

カリギュラ効果【Wikipedia】
カリギュラ効果（カリギュラこうか）とは、禁止されるほどやってみたくなる心理現象のことである。一例としては、「お前達は見るな」と情報の閲覧を禁止されると、むしろかえって見たくなるなどの心理が挙げられる。　

　もともと浦島伝説はかつて大人向けの言い伝えが子供向けに改変されたもので、教訓なんて必要はない。

　愛人を激しく愛した後に家族の元に帰ると言ったならば、そこで渡される土産は分かりきっている。そう、男を破滅に導く最終アイテム、それが玉手箱なのである。

　「実は妊娠しているの。。。」「奥さんにあなたとのことをバラす。。。」それが玉手箱なのかもしれない。